IBM 3592

3592テープカートリッジ

IBM 3592IBMによって開発されているテープドライブおよび磁気テープ製品である。2023年現在[update]、最新ドライブはTS1170である。 最大50 TB(非圧縮)を転送速度400 MB/秒で保存する事が出来る。

概要

オープンフォーマットであるLinear Tape-Openと比較して、3592はIBM独自のフォーマットであり、エンタープライズ製品と位置づけられる。 最初の世代のドライブはIBMのプロダクトナンバー3592であり、Jaguarというニックネームで発売された。 次の世代のドライブはTS1120であり、同様にJaguarというニックネームである。 メディアの低廉性、高い信頼性、シーケンシャルアクセス時の高速性から、3592テープドライブは今なお高い需要がある。

フォームファクター

テープフォーマットは前身の3590および3480と同様であり、テープ幅は1/2インチ、カートリッジは4 x 5 x 1インチである。 カートリッジはシングルリールであり、巻取りリールはテープドライブに実装されている。 過去のテープ資産を有効に活用できるようにするためカートリッジは少なくとも3世代のドライブに渡って記録・再生が可能である。 既に所持している古い世代のカートリッジを新世代のドライブで再利用すると、より高い容量で利用出来るようになる特徴がある。 具体的な容量の組み合わせは#カートリッジを参照。

ドライブ

主な技術的な特徴としてLinear Tape-Openと同様に圧縮、WORM、暗号化、パーティショニング機能がある。TS1140以降はLTFSもサポートしている。また、TS1155ではファイバーチャネルに加えてイーサーネットもラインナップされた。iSCSIRDMA・オーバー・イーサネット(英語: RDMA over Converged Ethernet (RoCE)をサポート[1]

Gen 1 Gen 2 Gen 3 Gen 4 Gen 5 Gen 5A Gen 6
製品名 3592 [2] TS1120 [3] TS1130 [4] TS1140 [5] TS1150 [6] TS1155 [7] TS1160 TS1170[8]
プロダクトコード 3592-J1A 3592-E05 3592-E06 3592-E07 3592-E08 3592-55F (Fibre Channel)

3592-55E (Ethernet)

3592-60F 3592-70F: Fibre Channel 16 Gbps

3592-70S: SAS 12 Gbps

発売日 2003 [9] 2005 [10] 2008 [11] 2011 [12] 2014 [13] 2017 [14] 2018
容量(非圧縮時) 300 GB 700 GB 1 TB 4 TB 10 TB 15 TB 20 TB 50TB
最大転送速度(非圧縮時) (MB/秒)[注釈 1] 40 100 160 250 300 360 400
圧縮機能 あり
WORM機能 あり
暗号化機能 なし あり
パーティション機能 なし あり
  1. ^ 最大転送速度はフルハイトドライブの場合。 ハーフハイトドライブでは同じ速度を得られない可能性もある。 メーカースペックを確認のこと。
注釈
  • IBM Redbook、3592モデルの情報 (セクション2.5および2.6を参照)

カートリッジ

例えばJCをTS1140で利用した場合、カートリッジ容量は4 TBである。 その一方で、JCをより新しい世代のドライブであるTS1150で利用すると、カートリッジ容量は7 TBまで増加する。 カートリッジのリユース(=媒体の性能向上なし)で記録容量が上昇しているが、これはドライブの性能向上(信号処理やトラッキング技術の向上)により記録密度が上昇した事に起因する。 JCとTS1150の組み合わせでは7 TBであるが、JDを利用することで容量は10 TBまで上昇する。 これは媒体の性能向上(材料の性能向上)に起因する。

IBM 3592 テープカートリッジ 各ドライブでの容量
Gen 種類 コードネーム テープ長 3592 J1A TS1120 TS1130 TS1140 TS1150 TS1155 TS1160
1 RW JA 610 m 300 GB 500 GB 640 GB
WORM JW 610 m 300 GB 500 GB 640 GB
RW, short JJ 246 m 60 GB 100 GB 128 GB
WORM, short JR 246 m 60 GB 100 GB 128 GB
2 RW JB 825 m 700 GB 1 TB 1.6 TB
WORM JX 825 m 700 GB 1 TB 1.6 TB
3 RW JC 880 m 4 TB 7 TB 7 TB 7 TB
WORM JY 880 m 4 TB 7 TB 7 TB 7 TB
RW, short JK 146 m 500 GB 900 GB 900 GB 900 GB
4 RW JD 1,072 m 10 TB 15 TB 15 TB
WORM JZ 1,072 m 10 TB 15 TB 15 TB
RW, short JL 281 m 2 TB 3 TB 3 TB
5 RW JE 20 TB
WORM JV 20 TB
RW, short JM 5 TB
注釈
  • TS1150はGen1やGen2カートリッジに記録・再生出来ない。
  • TS1140はGen1の再生は出来るが、記録は出来ない。
  • 3592 メディア・データシート
  • IBM 3592 カートリッジの互換性

外部リンク

  • Fifty years of storage innovation
  • Read/Write Compatibility Matrix
  • PC Magazine's Magstar Reference

脚注

  1. ^ TS1155 iSCSI/RoCEサポート
  2. ^ IBM 3592 製品ページ
  3. ^ IBM TS1120 製品ページ
  4. ^ IBM TS1130 製品ページ
  5. ^ IBM TS1140 製品ページ
  6. ^ IBM TS1150 製品ページ
  7. ^ IBM TS1155 製品ページ
  8. ^ “IBM TS1170 Tape Drive” (英語). www.ibm.com. 2023年8月31日閲覧。
  9. ^ 3592 J1A アナウンス
  10. ^ “IBM Documentation” (英語). www.ibm.com. 2023年8月31日閲覧。
  11. ^ “IBM Newsroom” (英語). IBM Newsroom. 2023年8月31日閲覧。
  12. ^ “IBM Documentation” (英語). www.ibm.com. 2023年8月31日閲覧。
  13. ^ “IBM Documentation” (英語). www.ibm.com. 2023年8月31日閲覧。
  14. ^ “IBM Documentation” (英語). www.ibm.com. 2023年8月31日閲覧。

関連項目

磁気テープ補助記憶装置のフォーマット
リニア方式
3/4インチ
(19.05 mm)
  • TX-2 Tape System (1958年)
  • LINCtape (1962年)
  • DECtape (1963年)
1/2インチ
(12.65 mm)
  • UNISERVO (1951年)
  • IBM 7 track (1952年)
  • 9 track (1964年)
  • IBM 3480 (1984年)
  • DLT (1984年)
  • IBM 3590 (1995年)
  • T9840 (1998年)
  • T9940 (2000年)
  • LTO Ultrium (2000年)
  • IBM 3592 (2003年)
  • T10000 (2006年)
8ミリ
(8 mm)
  • Travan (1995年)
  • IBM 3570 MP (1997年)
  • ADR (1999年)
1/4インチ
(6.35 mm)
  • QIC (1972年)
  • SLR (1986年)
  • Ditto (1992年)
1/8 (0.15)
インチ
(3.81 mm)
細幅
(1.58–
1.9 mm)
  • Exatron Stringy Floppy (1979年)
  • ZX Microdrive (1983年)
  • Rotronics Wafadrive (1984年)
ヘリカル方式
3/4インチ
(19.05 mm)
  • Sony DIR (19xx年)
  • Ampex DST (1992年)
1/2インチ
(12.65 mm)
8ミリ
(8 mm)
  • Data8 (1987年)
  • Mammoth (1994年)
  • AIT (1996年)
  • VXA (1999年)
4ミリ
(3.81 mm)