指大辞

指大辞(しだいじ、英語: augmentative)は、拡大辞増大辞とも呼ばれ、大きいものを表すために名詞に加えられる単語の接辞をいう。

概要

指大辞は指小辞と逆に、並はずれて大きい、強い、激しいことを意味する。そこから感嘆・賛美の意味や、逆に非難・否認の情緒的表現としても使われる[1]。とくにロマンス語スラブ語で発達している[1]

言語例

ロマンス諸語

イタリア語では接尾辞「-one」が使用される。

  • omone(大男、立派な男)< omo(男、uomoの別形)
  • librone(大きな本)< libro(本)
  • milione(百万)< mille(千)
  • trombone(トロンボーン)< tromba(ラッパ)
  • violone(ヴィオローネ)< viola(ヴィオール

ポルトガル語では接尾辞「-ão」が使用される。

  • livrão(大きな本) < livro(本)

スペイン語では接尾辞「-on」(女性は-ona)が使用される。

  • mujerona(大女、太った女) < mujer(女)

フランス語では接尾辞「-on」が付くものがあるが(例:médaillon メダリオン/大きなメダル)指小辞の場合も多い(例:chaton 子猫)。violonは「小さなヴィオールつまりヴァイオリン」でイタリア語のvioloneとは逆。

スラブ諸語

ロシア語の指大辞接尾辞には「-ище」(女性は-ища)、および「-ина」の2種類がある[2]:118-119

  • домина(大きな家)< дом(家)
  • голосище(太く重々しい声)< голос(声)
  • книжища(大きな本)< книга(本)

その他

バントゥー諸語名詞クラスが指大辞的な意味を持つ場合がある。例:スワヒリ語 jitu(巨人)< mtu(人)。

エスペラントでは接尾辞「-eg-」を指大辞として使用する[3]

脚注

  1. ^ a b 「指大辞」『言語学大辞典』 第6巻 術語編、三省堂、1996年、650-651頁。ISBN 4385152187。 
  2. ^ 井桁貞敏『標準ロシア語文法』三省堂、1961年。 
  3. ^ wikibooks:エスペラント/文法/接尾辞